シエルホームデザインの取り組み
パッシブハウス講義
シエルホームデザインでは、住宅性能の担保と成長のため、定期的に勉強会を行なっており、
弊社の設計顧問を務めている竹内昌義さんから、今後求められる住宅について学んでいます。
今回は4月に受けた講義『パッシブハウスとは何か?』を踏まえ、パッシブハウスの概要や実現するための工夫、高性能住宅を手がけるためのシエルホームデザインでの取り組み等をご紹介します。
目次
パッシブハウスの特徴
パッシブハウスのメリット
パッシブハウスへの工夫
小まとめ
理論:①高断熱高気密施工を行う
理論:②南面からの日射を確保する
理論:③複層ガラスと樹脂サッシの選択
理論:④湿度のコントロールができる機器の導入
実例:①高断熱高気密施工を行う
実例:②南面からの日射を確保する
実例:③複層ガラスと樹脂サッシの選択
実例:④湿度のコントロールができる機器の導入
パッシブハウスの特徴 |
パッシブハウスは高性能住宅の最高峰の一つです。
高いエネルギー効率より自然の力で快適な室内環境を生み出すことができるパッシブハウスは、日本最高峰の住宅性能を目指す建築のスタンダードと言われています。
②性能評価基準が異なる
パッシブハウスの性能評価では、年間の1平方メートルあたりの冷暖房需要を基準に行われます。
多くのハウスメーカーが基準としているUa値やC値も大切な基準ですが、パッシブハウスではエネルギー効率をより重視します。
そのため、住宅内の温度を快適に保つために必要なエネルギー量を示す冷暖房需要の指数を基準としています。
③冷暖房機器を必要としない
高断熱性能と高気密性能をあわせもつ住宅です。
そのため、エアコンやヒーターといった冷暖房機器に頼らずに快適な室温を維持できることは大きな特徴といえます。
パッシブハウスのメリット |
メリットは大きく分けて4つあります。
①電気代の削減
電気がが高騰し続けている状況のため、住宅自体の性能の良し悪しがランニングコストに影響します。
パッシブハウスはエネルギー効率が非常に高いため、室内を目標の気温にするために必要なエネルギー量が少なくなります。暖房や冷房の設備に頼らず快適に過ごすことができるので、電気代の削減につながります。
②一年中快適な室温環境
高い断熱性能と気密性能が備わっている住宅は、エアコンなどの設備に頼らず、日射取得や日射遮蔽を考慮することで十分に暖かい・涼しい状態を維持できます。
そのため、適正な室温にするために必要なエネルギー量を軽減しつつ、一年中快適に過ごすことができます。
③健康への優れた影響
パッシブハウスは年間を通して快適な室温を提供できます。そのため、湿度や温度のコントロールが効果的に行われており、カビやダニ、ウイルスの発生や増殖を抑制するのにも役立ちます。これにより、アレルギーなどの健康問題の軽減や長寿といった効果が期待されます。
④環境への貢献
パッシブハウスは省エネルギーだけでなく、環境にも優しい選択です。エネルギー効率の高い住宅は温室効果ガス排出を削減し、地球温暖化への貢献が期待できます。持続可能な未来の住宅設計に向けた大きな一歩です。
パッシブハウスへの工夫 |
パッシブハウスを手がけるために求められる工夫は大きく分けて4つあります。
①高断熱高気密施工を行う
壁、屋根、床などの断熱材を効果的に配置し、熱損失を最小限に抑えます。
また、 窓やドア、壁、屋根の接合部をしっかりと気密性を確保し、外部からの空気の侵入を防ぎます。
②日射を確保する
冬季には南向き窓を設け、太陽光を室内に取り入れて暖房コストを削減します。
夏季には適切なブラインドや庇、袖壁などを利用して日射を遮り、過度な暑さを防ぎます。
③窓の選択
熱を逃がしにくい複合ガラスを使用し、断熱性能を向上させます。
樹脂サッシの採用を検討し、熱伝導性が低く断熱性に優れた窓枠を選択します。
④湿度コントロールができる機器の導入
高気密性能の住宅では新鮮な空気の取り込みが必要です。
熱交換型換気システムを使用して空気の入れ替えとエネルギーの回収を行い、室内湿度を適切にコントロールします。これにより、エネルギーのロスを最小限に抑えつつ、室内の空気品質を保ちます。
小まとめ |
ここまでいかがでしょうか。
電気代の高騰や今までの暮らしの文化もあり、日本人は『冬は寒さを我慢して暮らす、夏は暑くじめじめしたときに冷房や除湿をかける』などの『我慢の省エネ』をしてきました。しかし、パッシブハウスは、エネルギー効率、快適性、健康面で優れた住宅を提供するための革新的なアプローチです。これにより、今までの『我慢の省エネ』から『快適に暮らす省エネ』を生み出すことができます。
かつては冷暖房機器を必要不可欠と考えていた住宅ですが、パッシブハウスの登場により、その常識が覆されつつあります。年間を通じて快適な室温、電気代の大幅削減、健康や環境への思いやり、住環境における革命の先駆けと言えますね!
続いて、パッシブハウスを実現するために必要な工夫や考え方についてより詳しくご紹介していきます。
理論:① 高断熱高気密施工を行う |
パッシブハウスに必要な工夫の1つ目は、断熱と気密性を徹底的に向上させることです。これをバケツに水を入れる比喩を使って説明していきたいと思います。
バケツに水を入れる場合、次の4つの状況を考えることができます。
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バケツに満タンに水を入れることができる(家を快適な気温にできる):これは、十分な断熱と気密性を持つ家が、エネルギーを節約し、室内の快適な温度を維持できることを示しています。
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蛇口から水を入れる(暖冷房で家の中を目標温度に近づける):これは、一定量のエネルギーを使って、家の室内温度を目標に近づける必要がある場合を表しています。ただし、できるだけ効率的でエネルギー消費の少ない方法を採用すべきです。
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流水から水を入れる(日射取得などの自然エネルギーで家を目標温度に近づける):この部分は、自然のエネルギーを活用することで、エネルギーコストを低減できることを意味しています。例えば、太陽光を利用して家を温めたり、冷やしたりする方法が含まれます。
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バケツから漏れる水(断熱・気密性能が低く、エネルギーが逃げていく):これは、家の断熱や気密性が低い場合、エネルギーが無駄になり、高いエネルギーコストが発生することを表しています。
断熱・気密性が低い住宅で水を満タンにするためには、以下の2つの手法が考えられます。
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蛇口をひねり水をさらに注ぎこむ:エネルギー消費を増やし、高いエネルギーコストを支払うことになります。
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バケツの穴をふさぎ漏れる水を減らす:これは、断熱・気密性を向上させることを指します。付加断熱などの方法を使用して、バケツからの水漏れを最小限に抑え、エネルギーの無駄を減らすことができます。初期費用はかかるかもしれませんが、将来的には高騰するエネルギーコストを節約し、年中快適な室内温度の維持に役立ちます。
「バケツに水を満たすこと=快適な室内温度」とすると、パッシブハウスでは、バケツが完全に満たされている必要があります。これは断熱と気密性を高めることで達成されます。パッシブハウスでは、家全体が断熱材で覆われ、窓やドアからの熱の漏れを最小限に抑えます。
このように、断熱と気密性が高い住宅は、エネルギーの無駄を最小限に抑え、一年中快適な室内温度を維持できるのです。
理論:② 南面からの日射を確保する |
パッシブハウスを実現するために欠かせないのは、南側からの日射を効果的に利用することです。これにより、年間の冷暖房エネルギー需要を低減し、エネルギー効率を向上させます。
窓からの日射を活用する一方、窓は住宅の断熱性能に悪影響を及ぼす可能性があります。窓ガラスは熱の逃げ道となり得るため、適切な窓材や断熱設計が必要です。
このように、南向きからの日射を効果的に利用するために、建物のデザインと窓の選択が重要であり、これによってエネルギー効率が向上し、快適な居住環境が実現できます。
理論:③ 複層ガラスと樹脂サッシの選択 |
パッシブハウスを手がけるためには、窓の選定も必要となってきます。窓は住宅から逃げていく熱の4〜6割の逃げ道とされているため、その断熱性を向上させるために以下の2つの要素が重要です。
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複層ガラス:通常の単層ガラスではなく、2〜3枚のガラスが使用され、その間に空気層が設けられています。これにより熱の伝導が防がれます。さらに、ガラス自体が熱を放射しにくい特殊な加工が施されていることがあります。これらの工夫により、窓からの熱の逃げを軽減します。
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樹脂サッシ:伝統的なアルミサッシに比べ、樹脂サッシは熱の伝導が少なく、断熱性が高いです。アルミサッシは熱を伝えやすいため、窓周りからの熱の逃げ込みが多いとされています。樹脂サッシの採用により、窓周りの断熱性を向上させ、結露やカビ、床の冷えなどの問題を軽減します。
これらの窓の改善策は、住宅のエネルギー効率を向上させ、快適な室内環境を維持するのに役立ちます。
理論:④ 湿度のコントロールができる機器の導入 |
湿度は室内の快適さや健康に大きな影響を与えます。日本の気候風土には高温多湿の夏と低温低湿の冬があるため、パッシブハウスでは湿度のコントロールも重要です。
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湿度の影響: 梅雨の多湿な季節と乾燥した夏の日と比較すると、同じ気温でも湿度の違いにより体感温度が大きく変わります。湿度の高い時期は不快指数が高まり、湿度の低い時期は快適さが感じられます。湿度は体感温度に大きな影響を与える要因の一つであることがわかります。
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湿度と健康: 適切な湿度の管理は健康にも重要です。湿度が高い状態ではカビやダニ、ウイルスの発生と繁殖が促進される可能性があり、これらの要因が健康問題を引き起こす原因となります。湿度を管理することはこれらのリスクを減少させます。
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理想的な湿度: 一般的に湿度は50〜60%の範囲が理想的で、これらの湿度条件下ではカビ、ダニ、ウイルスの発生が抑制されます。この範囲で湿度を保つことが推奨されます。
湿度の管理には、適切な換気システムが役立ちます。特に1種換気と呼ばれる機械式の換気方法は、湿度の高い季節と低い季節に合わせて空気の供給と排気を調整でき、快適な居住環境を維持するのに役立ちます。換気については、また別のコラムにてご紹介させていただきます。
いかがでしょうか。
パッシブハウスには上記のような工夫、これらを実現するための正しい知識と高い技術力が必要となってきます。私たちは勉強会を設けることで、住宅性能の重要性を学んでいます。
最後に、こうした住宅設計の考え方を取り入れ、高性能住宅を手がけるためにシエルホームデザインが行っている取り組みについてご紹介します!
実例:① 高断熱高気密施工を行う |
シエルホームデザインでは、、高断熱高気密(バケツに水を満タンに入れることができる状態)の施工に近づけるため、断熱材の選定や断熱気密の施工の仕方にこだわっています。
まず、断熱です。シエルホームデザインでは壁面に高性能グラスウール、基礎断熱ではカネライトフォーム、天井には吹込みの断熱材を入れています。それぞれの断熱材が持つ力を最大限発揮できる方法で施工し、高い断熱材性能を確保しています。各断熱材の特徴については、コラム「断熱材の種類、なぜグラスウールを使っているのか」をご覧ください。
続いては、気密です。シエルホームデザインでは「いかに穴をふさぐか」をポイントに施工します。窓やコンセント周りは、特に施工が難しく、高い技術力が求められます。将来を見据えて事前にエアコンのコンセントの確保するなど、後々に穴をあけて気密性能を自ら壊すことがないないよう、打ち合わせを重ねてご提案をさせていただきます。
高断熱高気密施工のためには、現場の職人さんが断熱気密を正しく理解し、正しく施工することが重要です。シエルホームデザインでは、「シエルクラフトマンズ」というプロフェッショナル集団が施工にあたります。現場見学等もできますので、断熱気密についてより詳しく知りたい方は是非ご連絡ください!
実例:② 南面からの日射を確保する |
東北の寒冷地、山形県西置賜郡飯豊町に本社を置くシエルホームデザインでは、高いデザイン性と快適な住環境を両立するために、狭小地においても南面からの日射取得を確保できるデザインを心掛けています。
例えば、山形県天童市にあるこちらのモデルハウスでは、南面に大開口の窓を設けています。夏と冬の日射角度を考慮し、適度な長さの庇も取り付けています。一方で、北面には大きく窓を取らず、外観を魅せる設計を取り入れています。デザインを担保しつつ、土地の特徴や魅力を活かして、南面からの日射を確保するためには高い設計力が必要です。シエルホームデザインには15名の建築士資格者が在籍しており、施工事例も多数ございますので、是非 HP「施工実績」をご覧ください。また、 HP「見学会情報」では完成邸見学会情報を随時更新中です。こちらも是非ご確認ください。
実例:③ 複層ガラスと樹脂サッシの選択 |
窓については、トリプルガラスの樹脂サッシを標準仕様としています。前回のコラムの記述の通り、窓は住宅の中で最も熱が逃げていく部分です。そのため、断熱性の向上・維持につながる「複層ガラス」「樹脂サッシ」を採用しています。シエルホームデザインの施工技術が活きる窓を取り入れることで、夏は涼しく、冬は暖かい住宅づくりをしています。
実例:④ 湿度のコントロールができる機器の導入 |
シエルホームデザインでは、機械換気によって湿度をコントロールしています。第3種換気システムと第1種換気システムを取り入れ、適切な温湿環境の実現に取り組んでいます。導入している換気システムや、それぞれの違いについては、コラム「換気について」をご覧ください。
また、換気システムがしっかりと機能するためには適度にメンテナンスをすることも必要です。手入れの仕方や頻度は各換気システムによって異なります。自分たちの住宅に導入されている換気システムは何か、どんな特徴があるのか、そういった点を聞いてみることもお勧めです!
いかがでしょうか?
シエルホームデザインでは高性能住宅をより突き詰めていくため、パッシブハウスの考え方を用いて住宅づくりに取り組んでいます。完成邸見学会も開催しておりますので、シエルホームデザインが手掛ける高性能住宅をご体感にお越しください!
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執筆者プロフィール |
吉村 亮祐
2級建築士。住宅省エネルギー設計技術講習。省エネ建築診断士。ライティングコーディネーター。
2015年入社。設計提案部所属。図面や土地提案、住宅ローン等、お家づくりにおけるお客様のトータルサポートを行う。
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