東北+新

TOHOKU+N YOUTH DESIGN AWARD 2016

東北6県+新潟県の建築を学ぶ学生を対象にした、建築デザインのコンクールを開催しました。

冬は凍える寒さと豪雪に見舞われ、夏は厳しい暑さが襲う、四季の変化が顕著な東北の地。
そんな厳しい自然環境から人々を守り、暮らしを支えているのは建築です。
日々建築デザインを学び、才能あふれた学生は、地域の未来の暮らしを支える頼もしい存在。
「東北の暮らしをもっと楽しく、もっと創造的に。」そんな夢の詰まったアイデアが多数集まりました。

公開審査会&授賞式報告

2017年12月5日、山形県米沢市の東京第一ホテル米沢にて公開審査による最終プレゼンと授賞式を行いました。
対象となったのは、多数の応募作品の中から書類による一次審査を勝ち抜いた建築部門8作品、家具インテリア部門3作品。
学生たちは緊張感のある雰囲気の中、それぞれ熱のこもったプレゼンで審査員たちに自己の作品のPRに挑みました。

適性な審査ののち、建築部門グランプリ1作品、準グランプリ2作品、佳作5作品を選出。
さらに家具インテリア部門グランプリ1作品、準グランプリ2作品が選び抜かれました。

建築部門

TOHOKU+N YOUTH DESIGN AWARD 2017

建築部門 最優秀賞

蒼いの学校 縮小地域のたたみ方の提案
福田 晴也さん
(日本大学)

近代以降、河川は自動車の発達や、生活行為一部から切り離されています。また中山間地域では、少子化の影響から廃校が現れています。公共サービスを十分に受けるには都市部へでなければ受けることができません。そこで廃校寸前の学校をツーリストのための宿泊施設や研修施設へ改修し、新たに少人数の小中学校サテライトを設計します。そこには学校だけでなく、宿泊や市民のためのホールなど複合的な機能が川に隣接し、親水性をもった教育施設は近代によって失った公共性を新たに生み出す建築として、地域に根付く建築をめざします。

TOHOKU+N YOUTH DESIGN AWARD 2017

建築部門 優秀賞

カーテンが
金色になる日
藤間 優実さん
(東北大学)

新潟のある水田の真ん中を敷地とする。
水田は1年をかけて、ゆっくりと高さや色を変え続けている。
それらを最大限に受けとる住宅を設計した。
春は庭に空が映り、秋はカーテンが金色になる。
流動する、水田の環境を生活の中に落としこんでいく。

TOHOKU+N YOUTH DESIGN AWARD 2017

建築部門 優秀賞

つづら折る坂に住む
生活のカタチ
中津川 銀司さん
(新潟大学)

3年次設計課題「30戸の集合住宅の設計」
この内野を歩くと坂によって上り下りという普段の動きにバリエーションが加わっていく。
上った先に表れる海や家々の景色。景色の多様な変化が内野にはあった。私はそれがこの場所を特別なものにし彩りや街の様子を作り出していると思った。道のカタチを建築へと読み換えることでそこに住む人々と周辺の人々、街の関係性を作り出していく。街から家々へと伸び、つづら折る坂は生活のカタチを生み出す。

佳作5作品(順不同)

  • 「まち、みち、ろじ」
    遠藤 瞳さん(長岡造形大学)
  • 「FREE LIBRARY 〜商店街に建つ地域図書館分館〜」髙橋 依子さん(宮城大学)
  • 「Velarium ―再建の幕開けを告げる―」
    寺沢 鳳成さん(日本大学)
  • 「Artist In Heritage」
    藤村 皓也さん(日本大学)
  • 「揺れる蔵、動く蔵」
    柳沼 明日香さん(日本大学)

インテリア部門

TOHOKU+N YOUTH DESIGN AWARD 2017

インテリア部門 最優秀賞

ぬくもりの家
吉田 真菜さん
(盛岡情報ビジネス
専門学校)

コンセプトテーマは「ぬくもり」。1階はどこにいても家族のぬくもりを、2階は個々の部屋で太陽のぬくもりを感じることができるようデザイン。床やキッチン、階段などに木材を使用することで、自然なあたたかみを演出した。また、永く使ってもらえるように、シンプルなデザインと、使いやすい動線を考慮し間取りを設定した。

優秀賞2作品(順不同)

  • 「家族との和」
    田中 達也さん(盛岡情報ビジネス専門学校)
  • 「家族の団らん〜コミュニケーションがとれる家~」須崎 優花さん(盛岡情報ビジネス専門学校)

審査員紹介・
各賞へのコメント・総評

特別審査員

橋本 健史 氏

橋本 健史 氏

403architecture [dajiba]
筑波大学 非常勤講師

「流動のなかの建築」というテーマに対して、様々な解答が寄せられた。「流動」とは単に動きや変化があることではなく、それがある連続性をもっていて、しかしながら構造を保持できないほど移り変わっていく様を表している。そのような流動に対して、如何にしてその連続性を捉える枠組みを設定し、またその移り変わりに積極的であれ消極的であれ介入して、建築と呼ぶことができる構築的なアプローチが可能なのかどうかが問われていた。
 建築部門の最優秀賞となった福田案は、過疎化とツーリズムという人の流動、河川という自然環境の流動、学校と地域施設というプログラムの流動を捉え、地域におけるクリティカルなポイントに新たな建築を提案したことが評価された。構造計画や開口部のデザインが、これらを紡ぎ合わせるのに不可欠なものとなっていれば、より確かな強度を持った建築になり得ただろう。
 優秀賞の中津川案は、集合住宅という合理性を前提としたビルディングタイプに対して、大らかで楽しげな回路を持たせ、活き活きとした生活像を描いていた。土木的なスケールが広域の環境に対して、災害対策やエネルギー問題といったような観点からも有効であれば、都市のなかの切実な生活基盤となりえたはずである。
 もうひとつの優秀賞の藤間案は、水田の移りゆく風景と共にある生活像を、ミニマルで静的に表現していた。農業という循環する生業に対して、より積極的に参加するようなプログラムになっていれば、変わるものと変わらないものの機微に触れるような空間になったかもしれない。佳作では柳沼案が印象的で、演奏や子供の遊んでいる振動を酒造に活かすという荒唐無稽にも見えるアイデアによって、プログラムの新鮮な連動をデザインしていた。蔵を記号的に捉えることや構法についての批判的な考察があれば、建築を通した新しい地域の連関を生み出すことができそうであった。
 また、インテリア部門の1等となった吉田案は、風除室という地域特有のしくみを肥大化させ、環境的な性能のためだけではない空間をつくっていた。これによって住宅を内部の問題に留めず、周辺との積極的な接点となるような可能性を感じさせた。
 いずれの案も既に完成されたものというよりは、さらなる展開を期待させるものであった。流動を捉えるとは、そのようにどこまでも広がっていく射程と付き合い続けることでもある。このコンペが、そのような意味での建築の途方もない大きさについて考える契機となったのであれば、何より嬉しく思う。

審査員

西村 伸也 氏

西村 伸也 氏

新潟大学 工学部
建設学科建築学 教授
東京大学 工学博士

福田さんの作品の講評
縮み続ける地域に対して、どのように空間を創造していくかの提案であり、それを「たたむ」という言葉で表現している点が優れている。

中津川さんの作品の講評
重なる環境をつづれ折りの坂として、表現する空間を投げかけている。そのプログラムと提案の特徴が高く評価された。

藤間さんの作品の講評
環境の変化を受け入れるという覚悟の表明であり、住人と環境の浸透性の裏に流れるゆるやかな時間を感じさせる。

吉田さんの作品の講評
広い風除室をもつ魅力的な提案である。細かい所まで設計の目が届いていて、高い質の空間になっている。

総評
今回の課題の中で、新しい環境の見方や時のとらえ方が提案され、それぞれに特徴ある空間へとたどり着いていた。若い人たちがこのような機会に力を試すことのできる大切さを改めて感じ、今後への期待を大きくする場であった。

審査員

地濃 茂雄 氏

地濃 茂雄 氏

新潟工科大学 名誉教授
元新潟大学 非常勤講師
東京工業大学 工学博士

福田さんの作品の講評
世の中の移り変わりの中、少子化の課題を直面し「縮小地域のたたみ方」の発想表現を具現化した提案が面白い。その発想に裏打ちされた優れた作品であった。

中津川さんの作品の講評
ダイナミックで野心的な提案に魅せられ、坂を切り口とした発想が、「つづら折り」の形で表現された優れた作品であった。

藤間さんの作品の講評
自然の移ろいを取り込んだ癒し空間(時空)がうまく住宅として成立している。これにもう一つプラスする時空がさらなる作品の発展が期待される。

吉田さんの作品の講評
限られた住宅空間の中に温もりある家を設計表現した好感のもてる作品である。

総評
審査した全作品に「建築を学ぶ姿勢」が垣間見られ、次代を担う諸君に今後の期待がもてた。とりわけプレゼンテーションの素晴らしさに感銘した。

[ 主催 ]シエルホームデザイン
( 株式会社ホリエ )

[ 協賛 ]山形銀行 
[ 後援 ]株式会社山形新聞社、
山形放送株式会社、
Gino FURNITURE &
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